2004-01-01から1年間の記事一覧

ピローマン 

■ 翻訳劇のフシギ・翻訳劇の魅力 6 10月にシアタートラムで上演された『溺れた世界』(ゲーリー・オーウェン作)もそうだったが、なぜ、イギリスの若い劇作家は、作品世界の枠組みとして、時代の特定できない全体主義国家を想定するのであろうか。昨年度の…

さだまさし「恋文」

25年以上、さだまさしを聴いてきたのだが、最近は新作CDを聴いても興味が持てず、心が離れていくのを感じている。それでも彼のライブは超一級品であり、魅力的だ。だから半年以上続く一つの全国ツアーには、毎回一度以上足を運んできた。今回も、チケット…

9月から11月の演劇

11月15日現在までの観劇記録。 9/29 ママが私にいったこと(青山円形劇場) 実力派の女優4人が、少し難解な家族劇に挑戦。演技は申し分なし。翻訳がうまくないところがあるのか、演出が自分の感性と合わないのか。あるいはこういうお話があまり好みではない…

ときはなたれて/チェーホフ的気分

■ 翻訳劇のフシギ・翻訳劇の魅力 5 『ときはなたれて』/『チェーホフ的気分』 実在の人物が実際に発した言葉を素材に構成された芝居を、偶然にも続けて二本観た。 一つ目は燐光群アトリエの会の『ときはなたれて』The Exonerated。作者らは2000年にア…

赤鬼(ロンドン/タイバージョン)

■ 翻訳劇のフシギ・翻訳劇の魅力 4 『赤鬼(ロンドン/タイバージョン)』 ある漁村に異人が流れ着く。村人は彼を「赤鬼」と呼んで恐れ、排除しようとするが、村でよそ者扱いをされる女だけが「赤鬼」を助け、親しくなっていく。 現代演劇を代表する劇作家・…

8月9月の演劇

9月20日現在までの観劇記録。 8/3 だるまさんがころんだ・私達の戦争(燐光群 ザ・スズナリ) 地雷がテーマのだるまさん、は再演。あいかわらずの完成度だが、外人の役者さんのたどたどしい日本語はちょっと気になった。でもきっとわざとキャスティングし…

お気に召すまま

■ 翻訳劇のフシギ・翻訳劇の魅力 3 通っていた大学が、郊外の河川敷近くにあったため、よく中古車で通学して、講義後は仲間と近辺をドライブして時間をつぶしていた。そんな場所に20年後、シェイクスピア全作品を上演しようという芸術劇場が現れるとは夢に…

6月7月の演劇

ひさびさの更新。前回以降に観たストレートプレイ。 6/23 請願 -静かなる叫び-(新国立劇場小劇場) シリーズ・女と男の風景の最後の演目。鈴木瑞穂と草笛光子の二人芝居。作はブライアン・クリーク。イギリスの80年代、退役軍人の夫婦。余命いくばくもな…

ハロー・アンド・グッドバイ

■ 翻訳劇のフシギ・翻訳劇の魅力 2 演劇鑑賞ほど、人によって視点や評価が食い違うものはない。それは、俳優や観客の状況によって上演が毎回同じものにはならないことと同時に、その内容が大きく個人的な体験とリンクしてしまうことも往々にしてあるからだ…

エレファント・バニッシュ

■ 翻訳劇のフシギ・翻訳劇の魅力 1 最近上演された翻訳劇の舞台をレポートしていくのが、この記事の趣旨なのだが、最初はちょっと変わり種を紹介することにした。前号掲載の「翻訳読書ノート」とのリンクでもある。 村上春樹の「象の消滅」「パン屋再襲撃」…

5,6月の演劇

忙しさが続くので、また備忘録的に。 5/12 「てのひらのこびと」(新国立劇場小劇場) 高校教師(♀)と教え子の高校生(♂)の恋愛逃避行を描いた科白劇。鈴江俊郎の戯曲は時に詩的で時に難解。裕木奈江と茂山逸平が熱演するも苦しいところを、壇臣幸が後半登…

 今春のオペラ

3/29 神々の黄昏 ついに観た、トーキョー・リング。クラシック音楽を聴く耳を育てていない自分には、キース・ウォーナーの奇抜な演出が実に楽しかった。こんなに面白いものなら、毎年観に行けばよかった。完結編だけ観てしまったのは残念。しかもチクルスが…

今春の古典芸能

2/22 内濠十二景 フランスの日本大使だったポール・クローデルの「二重の影」という小説を、能として観世栄夫氏が構成。能を観るのが初めてなのに、こんなに変わり種を観てしまった。正直どう評していいやらわからない。が、能表現が持つ、一種の夢幻的な雰…

今春のミュージカル

4/28 オン・ユア・トゥズ 上記、マシュー・ボーンの「白鳥」でファンを魅了したダンサー、アダム・クーパー主演のミュージカル。1920年代を舞台にした話で、内容はぱっとしないが、アダムのコメディアンぶり、タップ、歌、劇中劇のバレエシーンなどファ…

今春のダンス・バレエ

昨日に続いて、今春の印象に残った舞台を。 2/23 コンフェッション(熊川哲也) 食わず嫌いだったクマテツをはじめて観る。クマテツの振付は特徴があって、なかなか面白いと思った。小品も新作もそれぞれによい。オケもよかったように思える。舞台演出家とし…

今春の演劇

三月は文章書き、四月は新学期と忙殺され、ここもしばらくお休みした。GWも慌ただしく過ぎていくが、ここらでちょっと復習しておくことに。書かなかった間に印象に残った舞台について一言ずつ。まずは演劇編。 2/24 美しきものの伝説 紀伊国屋ホール 大正…

エンジェルス・イン・アメリカ

隅田川東岸、森下町付近にベニサン・ピットという稽古場と劇場が一緒になった場所がある。もともとは倉庫か何かだったらしく、とにかく見た目が悪い。でもなかなかよい芝居もやる。しばらく行ってなかったのだが、ひさしぶりに足を向けてみた。 「アメリカの…

RENT

二月後半は、連日舞台に通い、ついにはすっかり疲弊してしまった。インプットばかり多くて、ここにアウトプットすることができなくなっていた。弥生三月を迎えるのでぼちぼちと整理していこうと思う。 2/17 東京厚生年金会館。NYでロングランしているミュ…

アル・ハムレット・サミット

春の嵐をついて、新宿パークタワーに向かう。ビル風がひどい。開演一時間前についてしまい、パークタワーホールのロビーで一休みする。まだ客は二三人しか集まっていない。スタッフらしき人達がちらほらと行き交う。開場時間も過ぎてかなり人が集まった頃、…

川上・三番叟

バレンタインの日は暖かかった。春の嵐になるという予報をよそに、輝かな陽光を浴びて出かける。世田谷パブリックシアター。今年に入ってもう三度目か。今回はこのホールの芸術監督である野村萬斎の企画「狂言劇場」。AプロとBプロに別れており、Aプロは…

国性爺合戦

二月の国立劇場文楽公演は、「国性爺合戦(こくせんやかっせん)」「曾根崎心中」「仮名手本忠臣蔵」と、名作が並んでいる。文楽は見始めて短いが、自分でも浄瑠璃の一節を知っているくらいの超有名作「曾根崎心中」が一番観たかった。が、重要無形文化財・…

カメレオン・リップ

ケラリーノ・サンドロビッチ作・演出。名前だけだと何処の国の人だ、ってことになるけれど、この人は日本人で、昔「有頂天」というバンドでロックをやっていたこともある人。まあ演劇界では常識なのかもしれないけど。 この人の芝居は、CS放送ではいくつか…

三人吉三巴白浪

歌舞伎座はひさしぶりであった。留学生の日本文化研修ということで、参加者四名を連れて三階A席で観賞。舞台はそれほど遠く感じないのだが、花道がほとんど見えないのは辛い。さすがに一万円を越える一等・二等席とは雲泥の差である。まあ三階でも本当に前の…

解夏

映画「解夏(げげ)」を観た。先日「精霊流し」でがっかりしたので、「江戸の仇を長崎で」ならぬ、「長崎の仇を長崎で」討とうと思い、さっそく出かけてきたのである。日曜日に新宿に出たついでに夕方の回に飛び込もうかと思ったら、立ち見になっていたので…

レッツゴー!忍法帳

6日金曜に珍しく男性の友人と鑑賞。楽しかった。漫画・アニメをそのまま舞台にしたような感じ。一緒に行った友人は関西出身なので、「吉本的」と言っていた。あそこまでギャグとエンターテイメントに徹してくれれば、文句はいらない。あそこに何か思想性や…

ピンク・フロイド・バレエ

日曜日は、NHKホールにて、ローラン・プティの「ピンク・フロイド・バレエ」を鑑賞。舞台上には何もなく、後ろに大きなスクリーンがあるだけ。踊り手はみな白い衣裳。男性は上半身裸、女性はなんだかオリンピックの体操選手のよう。踊り手の超絶技巧には…

人工楽園

7日は、世田谷パブリックにて、ダンスカンパニー、H・アール・カオスの「人工楽園」という公演を観る。振付家の大島早紀子と踊り手白河直子を中心とした、女性集団のようである。振付家・踊り手とも天才の名をほしいままに世界的な活躍をしている若手らし…

精霊流し

新宿、テアトルタイムズスクエアで観賞。さだまさしファンの手前、映画館で見ておこうと思い、チケットを買ってあった。公開期間が終わりかけていたので5日の昼間に観に行った。映画館は素敵なところだ。だが内容は。 うーん。いけませんねえ。これでは連ド…

あの大鴉さえも

5日に、相模大野まで出かけて観てきた。竹内銃一郎作の芝居。狂言の茂山家若手三人が出演。昨年の秋公演が学会発表の直前の時期だったため、観たかったがどうしてもいけず、今回、ツアーの最終日、一日だけ開催された会場に赴いた。観客は少なかったが、と…

アート・ガーファンクル(S&G)

昨日の話の続きである。ネット上では、ロックの殿堂にまで入り、60年代回顧の大ツアーでアメリカ社会に大きな影響を与えた後だけに、彼の「無責任な行動」に対して許せないという気持ちと、でもやはり彼らが好きだし、来日すれば行くだろう、という気持ち…